くまのつぶやき

かんがえる、きめる、はかる、つくる、つたえるにまつわるスキルやテクニックを書いてます。ときどき、はたらきかたとか、気になったこととかも。

QBハウスの値上げを分析してみる

くまごろうです。

 

先日、QBハウスで髪を切ったら、4月からの値上げのお知らせと券売機の変更のお知らせをもらいました。

 

これまで1,000円きっかりだったQBハウス。4月からは1,080円です。

だから券売機もお釣りが出るように変わります。

 

お釣りの取り扱いが増えるって、店舗のお仕事を思い浮かべるとかなり面倒なはず・・・

 

開店前にはお釣りをセットし、小銭が足りなくなったら補充し、売上もお札だけじゃなく小銭もあるだろうから、持ち運びが重くなるだろうし・・・

 

なにより、約500店全店の券売機を入れ替えるのも、かなりな投資になるはず・・・

 

それでも値上げする理由をちょっと考えてみました。

 

QBハウスの業績の推移

ホームページを見に行ったら、こういう数字がありました。

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数字だとわかりづらいので折れ線グラフにします。

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2000年から2006年、そして2011年から2013年にかけて、店舗も来客者数も伸びていますね。

 

ちょっと角度を変えてみてみると・・・

せっかく店舗数と来客者数があるので、割り算して、1店舗あたりの来客者数で見てみます。

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2007年以降、1店舗あたりの来客者数は約30千人、つまり3万人で横ばいしていることがわかります。

 

QBハウスは一人1,000円なので、来客者数の停滞=1店舗あたり売上の停滞を意味します。

 

1店舗あたり売上は年間3,000万円のまま6年間が経過している、といえます。

 

売上は「単価☓顧客数」なので、売上をあげるためには、単価をあげるか、顧客数をあげるしかないです。

でも、顧客数が停滞し、差別化ポイントが「単価1,000円」となっていると、どうあがいても単価をあげられなかったんでしょう。

 

消費税アップがチャンスと見て、1,000円から1,080円への単価アップに踏み切ったのでしょうね。

これだけで、顧客数が増えなくても、1店舗あたり80円☓3000人=240万円/年の売上増加になります。

 

でも、券売機の導入にけっこうお金がかかるのでは・・・

ネットをちょろちょろと調べたら、小銭に両替ができる機械は、ピンきりですが数十万円で買えるようです。

約500店舗分の導入なので、一括発注すればボリュームディスカウントも効きそうですよね。

仮に1台の導入(機械の購入、設置にかかる費用)に80万円かかったとします。

 

1店舗あたりで年間の収支を考え、券売機導入コストと見合うのか、検討してみます。

 

年間の売上が3,000万円。

単純に12ヶ月で割ると250万円が毎月の売上となります。

QBハウスは1店舗あたり3席のところが多いです。
シフトを考慮し、従業員は5名で運営していると仮定します。

ネットによると従業員さんの給料はだいたい25万円前後。

社会保険料など考慮しこの1.5倍が人件費とすると、一人37.5万円/月☓5人=187.5万円が店舗人件費かなと。


もろもろ家賃、光熱費、消耗品費などが30万円くらいと仮定します。

そうすると粗利益は30万円ほどですね。

図にするとこんな感じです。

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したがって、3ヶ月分の粗利益で機械の導入と、値上げを行うという算段になります。

 

仮に来客数が変わらないと仮定します。

そして、費用がすべて8%あがると仮定します。

すると、粗利益はどのように変わるでしょうか?

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粗利益は35万円となっています。粗利益も8%増加する算段です。

 

でも従業員人件費を8%増加させるとは、労働者目線で考えると非現実的です。

だから粗利益はもっと増えるのだと考えます。

 

QBハウス以下の価格設定ができる理髪店は、利益を考慮した場合、皆無に等しいでしょう。*1

そして、顧客数の飽和から、この人たちは理髪にお金をかけないため、80円あがっても、QBに通い続けるでしょう。

 

だから、この売上増加は固いように感じますね。

 

売上=単価☓顧客数に潜む、もう一つの変数

QBハウスのホームページにこんなことが書かれています。

 1ヶ月で10~12mm程度伸びてしまう髪の毛。QBハウスでは、その伸びた分だけをカットすることにより、髪型を極端に変えることなく個性あるベストスタイルを維持するためのカットを提案しております。月に2回は是非ご利用ください。[QBハウスホームページ QBハウスとは より]

 

QBハウスはお客様に対し「月に2回はきてほしい」と言っています。

短い髪を好む人だったりすると、少し長くなると見た目が悪いので、このくらいの頻度で行くかもしれません。

となると、売上の計算式はこうなります。

 

売上 = 顧客数 ☓ 単価
   = (利用客数 ☓ 利用回数) ☓ 単価

 

となると、値上げにより「頻度を減らしてもいいや」と思う人がどれくらいまでなら、これまでの売上を維持できるか?が気になります。

そうじゃないと、新しい券売機という投資をする意味がなくなりますので。

 

ということで、一月あたりの1店舗売上250万円から、月間2,500人の来客を100%ととして、何%下がるところまでが、現在の売上を越えられるか?をシミュレーションしてみます。

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この計算結果と、来客者数が現在の95%を切ると、現在の売上高よりも下がってしまうことになります。

 

つまり、1店舗あたりの顧客数が増えない以上、来店頻度が減ってしまうことは、現在よりも売上が下がってしまうリスクをはらんでいることになります。

 

これでも値上げしないと!と踏み切ったところから、QBハウスが推奨する「月に2回」はあまりお客様に浸透していないのかもしれないですね。

 

その一方で、来店頻度や来客数が減らないための打ち手も用意しています。

「平日シニア料金導入のお知らせ」

平日(土日祝日を除く)に限り、満65歳以上のお客様につきましては、2014年4月1日から「平日シニア料金」として、税込1,000円でサービスを提供させて頂きます。[QBハウス ホームページより引用]

シニア層にはこれまでと同じ料金で提供することで、顧客離れを防ぐ目的が見えますね。

そして平日に限定していることから、シニアは平日に通うように促してますね。これにより、土日祝日に激混みになることを避け、シニア以外の層が少しでも待たなくても済むような措置かと考えます。

これと並行して、QBハウスではWebから各店舗の混雑状況を確認できる仕組みも導入するそうです。

 

おそらく、安くても待ち時間が長いことで、他店へ流れてしまう損失を、できるだけ小さくしたい、という意図が見え隠れします。

実際、私も土日の夕方とかにいくと、1時間以上待つことがあります。そういうとき、あとから来る人は、ちらっと中をのぞいて、どこかへ去っていきます。

 

価格は上昇するけれど、待ち時間に対する打ち手と、売上減少を食い止めるシニア向けの打ち手、この作戦がどのような結果となるか?4月以降のQBハウスが気になります。

 

たぶん気づいている人は気づいていると思いますが・・・

最後まで読んで下さりありがとうございます。

たぶん、お気づきのかたはお気づきだし、「なぜ、くまはそこを突っ込まないのか?」と思っているかたもいらっしゃると思います。

 

今回の値上げ、なにげにうまーいタイミングと設定だなあと思うのです。

 

なぜか?

 

なぜなら、2014年4月1日、消費税はこれまでの5%から8%と3%あがります。

でも、QBハウスは、税込み価格を8%あげています。

 

現行価格の1,000円は税込み価格です。


だから税抜き価格は、1,000円/1.05で952円のはず。

そこから税抜き価格が1,000円に上がります。

952円に対し1,000円は、1.05倍です。

つまり税抜き価格で5%の値上げとなります。

 

だけど、僕らへの「消費税8%」というキーワードの刷り込みが大きいため、
なんとなく1,000円のものが1,080円になっても「ああ、8%アップ、消費税あがるからね」と思わされてしまいます。

 

マスコミなどで「消費税が現行から3%あがる!」というメッセージを強めにしていたら、たぶんこの値上げはもっと違和感を感じていたかもしれません。

 

このあたり、絶妙なタイミングでカードを切ったなあと感じました。

 

ではまた!

*1:できたとしても固定費を賄うため、閑散時間帯のみの低価格設定とかでしょう。

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